社会には様々な課題や問題が溢れています。待機児童問題や子育て支援問題、介護福祉問題、高齢者・障がい者雇用問題、環境問題、地方空洞化問題など言いあげればきりがないほどの課題が山積みです。
このような社会的課題を解決するために住民やNPO団体、企業が行う事業活動を昨今では「ソーシャルビジネス」と呼びます。「ソーシャルビジネス」は、人々が多種多様な価値観を持つようになった現代日本において、行政に頼らず、地域団体や民間企業が、ビジネスとして社会的課題に取り組み、それを解決していく事業活動として注目を集め、2007年頃を皮切りに大きく広がったビジネスモデルです。
ソーシャルビジネスは『経済産業省「ソーシャルビジネス研究会報告書(平成20年4月)」』によると以下の通り定義づけされています。
ソーシャルビジネスは、社会的課題の解決と同時にそこで働く人々の意識向上や、町(地域)おこしなど、社会の活性化にも役立ちます。そのような観点から、昨今では他の分野で営利活動を行う企業が「社会的責任(CSR)」として参入する事例も多いです。
「ソーシャルビジネス」という言葉が浸透する前から、大きな社会問題として取り上げられていたものに「資源問題」があります。あらゆる金属資源を輸入に頼る日本において、「資源問題」は将来的に日本の「経済問題」に発展してしまうと叫ばれ、「都市鉱山」というキーワードが飛び交ったときでもあります。そしてそれは今でも潜在的な課題として残っています。また、「高齢者雇用問題」や「地方空洞化問題(地方創生)」なども当時から叫ばれ続けていた解決する必要のある問題です。当社が現在展開している“パソコンリユース・リサイクルサービス「ReEMS」”は、この「資源問題」「高齢者雇用問題」「地方空洞化問題(地方創生)」という3つの社会問題の解決を果たすため考案したビジネスモデルです。そしてそれは今の時代において「ソーシャルビジネスのモデルケース」といえるでしょう。
ソーシャルビジネスはこれからの社会において、なくてはならない視点のビジネスモデルです。これは『「健全社会」と「経済発展」は密接に関係している』という理にかなった見方です。
我々もソーシャルビジネスの一翼を担っている以上、自社の事業活動に社会的な責任を感じていると共に、これを継続することが地域社会にとって重要なことであると考えています。しかし、その意義・定義とは裏腹に、ソーシャルビジネスは「事業力が弱く」「収益性に欠ける」という事業(ビジネス)としては弱さが目立つ部分も多いと言えます。
それは、公的資金の導入や補助金などの援助なしでは経済的に自立困難な事業体(企業)が多いこと、また、事業継続のためにサービスの方向転換や路線変更など、試行錯誤を重ねる企業が多いことからも感じます。
ソーシャルビジネスは、あくまでも事業(ビジネス)でありボランティアではないわけですから、一定の収益を確保しゴーイングコンサーン(持続企業)として企業の成長と、活動の維持を果たさなければならず、それが果たせないのでは社会に貢献しているとは言えません。ソーシャルビジネスを立ち上げる起業家たちは、その性質(社会的課題を解決する)から「夢」「希望」「情熱」に溢れています。しかし、事業活動としての根源は「収益力」。これがなければ、逆に社会問題となってしまう恐れもあるのです。
我々アセットアソシエイツは、「ソーシャルビジネス」という言葉が周知される以前から、社会的課題に取り組み、それを事業化し活動を継続してまいりました。この事業活動の中で気が付いたことは「ソーシャルビジネスはジグソーパズルのように繋ぎ合わせ、組み合わせて展開する」ということです。
個別の社会的課題に取り組むソーシャルビジネスでは、①そのターゲット戦略において少数派が対象となることが多く②具体的な達成目標や成功事例を見い出し難く③生産性に優位を見い出すものでないことから「収益力」はどうしても弱くなりがちです。だからこそ、ひとつの社会的課題を果たすためのビジネスモデルを考えるのではなく、いくつかの社会的課題をパズルのピースのように繋ぎ合わせ、組み合わせることで「収益力」に結び付ける必要があるのです。
当社が行っている「ReEMS」はソーシャルビジネスのひとつの答えといえるでしょう。資源回収のプロセスにおいて、回収品を三重県のリサイクルセンターに送ることで地方活性化を図り、そこで高齢者の方々に働く場所を提供する。ReEMSでは「資源問題」「高齢者雇用問題」「地方空洞化問題」これら3つの社会的課題をパズルのように組み合わせ、まとめて解決するビジネスモデルを考案することで収益力を向上し、継続的な事業活動としています。
この3つの社会的課題を組み合わせてまとめて解決するビジネスモデルは、現段階では成功したといえるでしょう。しかし、見渡せば我々の生活する社会にはまだまだ多くの課題が山積しています。我々は自社の事業成功だけで満足はできません。当社のビジョンには、社会に存在するすべての課題をパズルのように繋ぎ、組み上げて解決すること、すなわち『ソーシャルビジネスソリューションの達成』が含まれています。
社会的課題は国民全員の課題です。これを事業化し収益力の伴ったものとして構築できれば、それはこれから先の未来も継続的に社会貢献できる事業活動といえます。
時間はこれから先も刻み続け、時代はどんどん移り変わっていきます。それとともに社会的課題は消えては生まれ、生まれては消えていくことでしょう。「ソーシャルビジネス」という言葉を単なる流行語としてはいけないのです。
そのような想いから、我々は現状に満足せず新しい挑戦を続けたいと考えており、ここ数カ月で急速に高まったアイディアが、このインタビューを受けている現在(2016年12月某日)、形となろうとしています。そのアイディアとは、現事業活動において社会に存在する別の課題も解決できないかと考えを巡らし具体化した動きです。
それは、世界的にも大きな問題と捉えられている「環境問題」への取り組みです。当社の次なるソーシャルビジネスソリューションは「資源問題」「高齢者雇用問題」「地方空洞化問題」というピースに「環境問題」というピースを組み込みます。これを組み込むことで、資源回収において課題とされている未回収機器(退蔵パソコン)が表面化されると考えています。
都市鉱山における課題は未回収機器(退蔵パソコン)と言われています。2003 年から施行された「パソコンリサイクル法(俗称)」はメーカー主導の金属機器回収に関する法律で、メーカーによる回収・リサイクルを義務付けています。製造元に回収義務を課し、各企業や自治体も積極的に法の周知に力を入れ、その認知度は国民の殆どにいきわたったといえます。しかし、『経済産業省「使用済製品の現行回収スキーム及び回収状況」調査報告(平成24年度)』によるとパソコンの回収率は87%であり、年間13%(約228 万台)は退蔵分という結果になっています。この退蔵分を回収することができれば新たな市場の開拓に繋がり、新たな収益が見込めます。しかし、これを表面化し、回収に繋げるのは多大な労力を必要とすると考えています。なぜならば、行政が法案を掲げ向上させたこの回収率に限界を感じる部分も否めないからです。
そこで我々は「環境問題」をピースとして繋ぐことを考えました。「産業廃棄物処理法」や「パソコンリサイクル法」で開拓できなかった領域を「環境問題」というキーワードに反応する人々に掘り起こしてもらう───。そんな発想です。
今までの事業活動や法案で補えなかった資源回収領域を、「環境問題」の視点から周知する。具体的には、『環境保護のための寄付や援助を、不要な情報機器(不要パソコン)で果たせる』という仕組みで、「日本自然保護協会-NACS-J-」の協力を得て取り組んでいきます。回収した情報機器(不要パソコン)はアセットアソシエイツの「ReEMS」が一挙に引き受けます。情報流出の不安を完全に無くすためのデータ消去技術は、今までの企業間取引の中でも大きな信頼を頂いている当社の強みです。この仕組みにより、今までの仕組みでは手の届かなかった領域の資源回収が可能となると考えています。これにより、またひとつの社会的課題の解決に貢献できると考えると歓びも一入です。
社会的課題の解決に向け、複数の社会問題を繋ぎ、組み合わせる「ソーシャルビジネスソリューション」が、いまこれから発動しようとしています。この新しい仕組みに、皆さんのご協力と賛同を願うとともに、未来の豊かな社会づくりに貢献していくことができれば幸いです。
株式会社アセットアソシエイツ
代表取締役社長 伊藤 修司